★20回目の節分草祭、山里で広がる交流 兵庫県丹波市青垣町 | |||||
兵庫丹波でも最も北寄りの丹波市青垣町に2月12日、セツブンソウ(節分草)の花を見に行った。名前の通り、節分すぎから咲き始めるキンポウゲ科の山野草。東芦田の集落では20回目の「節分草祭」が前日から開かれていて、地元の人が開花している4か所の「セツブンソウ回廊」を案内してくれた。 まず、蓮池のある「江古花園」裏の斜面の陽だまりのセツブンソウ=写真右。花びらのように見える白いがく、その中の黄色の小さい球形の花びら、紫色の雄しべの葯の色の取り合わせが絶妙で、毎年のように見ていても惹かれる。寒さに強く丹波に多く自生しますが、生息地が減ってきた植物を、地元の人が守ってきた。その後集落をまわり、自宅の庭など3か所の生息地を見せてもらった。最後の場所では、ご主人に案内してもらい、花は先だがエビネ、シュンランなどの山野草を教えていただいた。 ◇魅せる「静と動の文化を繋ぐ5人展」 セツブンソウ巡りと合わせ、むら内外の交流を深めようと「江古花園」では「東芦田の静と動の文化を繋ぐ5人展」が開かれていた。地元の達人が積み重ねてきた伝承のちりめん細工、俳句、絵画などが展示されている。 小寺昌樹さんは東芦田に多い社寺を調査した記録をデジタル化して編集、パソコンを操作して解説していた。「終戦直後の1947年まで、氏子で8歳を迎えた長男を馬に乗せて的に矢を当てさせる流鏑馬が行なわれていました」「川に水量がなく、戦後水利事業が完成するまで水田ができなかったので、冬の寒天や酒の出稼ぎだけでなく、宇治の茶摘みや岡山のイグサ刈など無雪期も積極的に出稼ぎに出ていました」など興味深い話を聞いた。 「動の文化」として目をひかれたのは、大原安太郎さんがリーダーとして進めている「丹波トレイルラン」の展示=写真上。2021年、23年に行なった「TAMBA100アドベンチャートレイル」で、丹波市を取り巻く峰々の山道100マイル(180キロ)を3日間で駆け抜ける過酷な競技。レースのハイライト写真や、今年6月4〜6日に実施予定の第3回大会のコース地図や高低図=写真下中=で紹介している。距離もさることながら、上り下りの激しさに驚かされる。 ◇丹波の風土駆け抜けるトレイルラン支える 絵画を出展した芦田哲さんの案内で大原さんの自宅を訪れ、トレイルランへの取り組みを尋ねた。大会は丹波市氷上町のプロトレイルランナー中谷亮太さんらが起ち上げた。神戸に住んでいた大原さんは勤務先の燃料会社の転勤で柏原町(現・丹波市柏原町)に移り、仕事で立杭焼の窯元にも出入りするなど丹波の地に溶け込んだ。40歳前でトライアスロンを始め、仲間の縁で青垣町東芦田にキャンプ地を開設して移り住んだ。大学の合宿場所にもなり、マラソンランナーだった妻が20人分の食事の面倒をみた。 コロナ禍でトライアスロンの合宿がなくなる中、「丹波を世界一のレースの舞台に」という中谷さんに共鳴した。五輪競技になってトライアスロンの規格化が進んだこともあり、丹波の自然を舞台にしたトレイルランに大きな可能性を感じた。大原さんは78歳の経験を生かし、地元自治体や住民団体との調整など運営を担っている。 ◇堅固な山城跡がレース後半の山場に 自宅兼キャンプ棟の背後の吼子尾山(くすのおやま、519m)には小室城址があり、トレイルランの後半の山場。この地を支配した芦田氏が鎌倉時代に築き、南北朝の戦いから織田信長の丹波攻めまで山城として使われただけに、山頂までの道も急で結構険しい。このエリアの距離は14キロで、ここだけをコースとした14〜140キロのシリーズ戦も開いている。 6月の大会に向けて大原さんは連日登って草刈りや枝払いをしている。山の麓にむらおこし施設「ごりん館」は最近使われなくなっていたが、トレイルランの仮眠所として活用されている。 私自身は「山はマイペースでゆっくり上り下りしたい」が好みで、不眠不休でタイムを競うトレイルランは別世界のイベントだった。ただ、「城址だけでなく、かつて旅人や物資が行き交った峠などを通るコースです。トレイルランが丹波を知り、歴史の道を甦らせるきっかけになれば…」という熱っぽい語りには思わずひき込まれた。コースを参考にさせてもらって、小刻みに丹波トレイルウォークをしてみようかと思った。 =2024年2月12日取材 (小泉 清) ◇ 東芦田の節分草まつりは通常2月第2日曜を軸に開催。2024年の「セツブンソウ回廊」は2月いっぱい見られる。近くの遠阪、森などの自生地を含む問い合わせは、丹波市観光協会(0795-88-5810) 【参考サイト】 TAMBA100アドベンチャートレイル ★青垣・江古花園のセツブンソウ (2013.2.7) ★初夏の東芦田・城の丸 (2018.5.20) |