晩秋の鯖街道・針畑越え  滋賀県高島市〜福井県小浜市           

・時期 紅葉・紅葉は樹種で異なるが、10月中旬〜11月中旬

・交通
小入谷へはJR湖西線安曇川駅から朽木学校前、高島市営バスに乗り換え小入谷下車。土・日・祝日は京阪出町柳駅から京都バスで葛川梅ノ木、高島市営バスに乗り換え
・電話  小浜市観光協会(0770・52・3844)高島市役所(0740・25・8000)
    =2020年11月4日取材

ブナ林が続く根来坂峠を越えて小浜に下りる針畑越え
 
 
  若狭・小浜から山、谷を越えて京の出町柳に至る鯖街道。コロナがおさまらない2020年の11月初め、複数あるルートののなかでも最も厳しいが最短ルートとなる針畑越えの一部を逆向けでたどった。

 峠越え海と都つなぐ最短路に再び光

 今回歩いたのは滋賀県高島市の旧朽木村で最も北西奥の集落、小入谷(おにゅうだに)から県境の根来坂を越えて小浜の街を目指す区間。出町柳から鞍馬、花脊を通ってこの集落に来る部分はカットしているので三分の一にも満たない。

 それでも小入谷から入ったのには経緯がある。この集落から県境の山・百里ケ岳への登山路があり、2001年に登って下山後にたまたま訪れた清水幸太郎さんから、「昭和30年代までは鯖街道を通って小浜と行き来していた」という話を聞いていたからだ。


 早朝、大阪から湖西線で安曇川駅に下り、高島市のコミュニティバスで9時40分に着いた。街道歩きの前に清水さん方を訪ねた。幸太郎さんは2011年の年頭に急逝されたが、妻の之枝さんは「グラウンドゴルフも楽しんでいる」と元気に話していた。またご子息の信太郎さん(72)は定年退職後、3年前から草津から戻ってきていて山仕事や畑づくりなどをしていて、明るい気持ちになった。昔からの家は清水さん方ともう一軒だけだが、新住民が9戸入っている。むらの仕事や役は全戸が参加している。パンを焼いて京都に出している店もある。

 今回は百里ケ岳に登らず、街道をそのままたどった。針畑川沿いの一般道を北へ向かってしばらく、川を渡って山道へ入る。長い根来坂(ねごろざか)の始まりだ。ポイントポイントに新しい案内板が建てられているのでわかりやすい。「海と都を結ぶ若狭の往来文化」として第一号の日本遺産に認定されたことから力が入っているようだ。

 ◇落ち葉踏み分け、続く山並みの紅葉楽しむ

 ところどころ林道を横切りながら、また山道に入り…を繰り返す。林道沿いに焼尾地蔵尊があった。清水さんが林道建設で切られた杉を使って建て替えたものだ。林道には渡り鳥を撮影に音じれたり、自転車で若狭に越えるサイクリストらがいて結構にぎやかだ。左手には北山の紅葉が鮮やかだ=写真右。

 落葉を踏み分け、上り坂をひと踏ん張りする。近江から若狭へ続く山並みの紅葉=写真左=を味わって進むと、目標の根来坂峠に立つ。今回の区間の最高地点で標高826m、小浜側では針畑峠と呼ばれている。東へ百里ケ岳に上がる道が、西へおにゅう峠に向かう道が続く通行の要衝で、お堂にお地蔵さんが安置されている。峠周辺にはブナ林が続くが、黄葉はすでに終わっている。

 のんびり休んでいたいが、出発が遅れ気味だったので、すでに12時半。お地蔵さんを拝んで若狭への下り道をとる。快適な落ち葉歩きが続き、40分ほどで池の地蔵へ。標高700mの地点に石積みの井戸があり、江戸中期に明庵禅師が鯖街道を行き交う人のために掘ったといわれる。「「枯れることがない」と書かれているが、鉄蓋がかぶせられれていて水は確かめられなかった。

  ◇「お水送り」の里 駆け歩く

  ほどなく一ったん林道に下りるが、そこに「小浜18キロ」と書かれていて、先行きにびっくり。再び山道に戻るが、なかなか里は遠い。ようやく赤い尾根が見えてきた。あとは上根来=写真右=、中の畑、下根来と車道を進む。下り気味なのは楽だが、街道歩きは里に下ってからが本領なのだろう。牛舎や家でも廃屋になっているものが目立つのは寂しい。

 遠敷川に沿って下根来の八百比丘尼の墓、鵜の瀬=写真左=にまで来ると、なじみの風景が見えてきてほっとする。実は今年の8月末に車で小浜駅から神宮寺、鵜の瀬から八百比丘尼の墓とめぐっていた。東大寺のお水取りの前に「お水送り」する鵜の瀬ではもう一度ゆっくりしたかったのだが、すでに夕闇が迫っていたうえ、小雨が降り出した。鵜の瀬資料館前で「名水100選」の水を一杯汲んだだけで先を急いだ。

 若狭彦神社の手前で雨が上がった。虹を見上げながら、午後5時過ぎに小浜線の東小浜駅着。完全に日が暮れたので、ここからは電車で小浜駅に行った。いずみ商店街はすでに暗かったが、さば街道ミュージアムのサバ君の前でゴールした。 (文・写真  小泉 清)


 
百里ケ岳〜鯖街道のブナの黄葉=2011.10.23取材

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