岩手山のコマクサ、イワブクロ 岩手県八幡平市、滝沢市 ![]() |
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![]() 生きている火山のもたらす景色と植生![]() ここから1時間ほど歩くと樹林帯が途切れ、北側を振り返ると八幡平の茶臼岳が見える。焼切沢を渡るころから硫黄の臭気がしてきて、岩手山が生きている火山であることを実感する。核心部の大地獄に入り、滑りやすいガレ場の斜面を慎重に上がっていく。緊張はするがルートははっきいりしているので、今も火山性ガスを噴出する火山ならではの景観を楽しみながら進めた。 ![]() ◇「お花畑」の奥にひっそり火山湖 難所を越えると沢筋に沿って高層湿原の「お花畑」へ。オタカラコウ、ミネウスユキソウなどの亜高山植物が咲いているが、チングルマは花が終わって薄茶の羽毛のような実になっている。ルートを離れて奥に進むと、火口湖の御釜湖、猪苗代湖がひっそり広がり、深いエメラルドグリーンにひきこまれそうだ。ここまでは午前11時までに到着、雨も上がって順調に進んでいるように思えた。 ![]() ◇強風吹きすさぶ外輪山に北国の群落 ![]() 不動平から強風に身をかがめるようにしてガレ場を上がる。こうした環境の中でもイワブクロの群落が広がり、ガスの中に薄紫と白の混じった袋状の花が見えた。日本では北東北、北海道、そしてシベリアに分布する花といい、白山などで見たことがなかった花だ。お鉢の直下で「高山植物の女王」といわれるコマクサの花も見ることができた。「過酷な環境の中でも」というのは人間本位の見方で、コマクサやイワブクロにとっては競争種のいない適地なのだろう。 お鉢に建った石の祠に着いたところで風は一段と強くなってきた。同行者の意向も聞いて山頂越えの道は取らず、引き返すことに決定。八合目小屋に戻り、樹林帯を通るので強風の影響が少ない馬返しコース新道を選び、昼過ぎに馬返し登山口に下山。予定は大幅に縮小したが、「荒天の岩手山もまた経験」と思い直して岩手山を振り返った。 (文・写真 小泉 清)=2019.7.29、30 ★北上川水運の拠点、御蔵につまる盛岡の歩み=2019.8.1取材 ⇒トップページへ |