残雪の姫神山 盛岡市玉山区 | ||||||||||
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昨年(2017年)10月の紅葉の時期に登った岩手県の姫神山(1124m)に季節をかえて春、別の城内ルートから再び登頂。残雪を踏みしめながら下山した。 春まだ浅い修験の城内コース上がる今回は日程的に登山を確定しておらず、前日に麓の石川啄木記念館を訪ねた後、いわて銀河鉄道渋民駅で借りた自転車で啄木ゆかりのポイントを回った。その時、田起こしの始まった田の向うに姫神山の姿=写真=を見て「やっぱい山は眺めるだけではなく、登らなければ」と思い立った。渋民駅からタクシーで城内登山口へ向かう。沢目、山屋と集落を通る。運転手さんの話では最も奥の城内第四は開拓集落。城内第一~第三への入植者は山を下り、第四だけが残っているという。ここを過ぎると砂利道の林道で、車を降りて歩くことを覚悟していたが、バウンドしながらも車を進めてくれた。 案内板や祠の建つ城内登山口から午前8時に北東に向かう尾根道を歩き出す。姫神山が修験の山だったころは、こここが表口だったのだが、今はほとんどの人が一本杉登山口から登る。城内登山口には車一台が停まっているだけだ。標高500m、雪は残っていないが、木々はまだ冬枯れの様相だ。福寿草の花だけが春の訪れを感じさせる。 登山道は一本道でそう急な勾配もなく、のんびりと歩いて行ける。きれいな水場のある清水神社、小姫神神社など信仰の道であることを思い起こさせる。たたら岩、窪みに水をためた水石、紡錘形の岩を載せた笠岩=写真=など面白い形の岩が次々と現れる。 しっかりした足取りで駆けおりてくる男性とあいさつをかわした。姿勢もピンとして老いを感じさせないが、78歳とのこと。この季節は毎日のように姫神山に登り、6月からは岩手山を中心に登るという。「今の時期は城内ルートが一番早く雪が消えて、泥に汚れず歩けるので、この道を選んでいます。東側の田代コースはまだ雪が残っています」と教えてくれた。標高1000mを越えると、日陰では雪が見られたが、道には残っていない。 ◇正面にど〜んと冠雪の岩手山最後に急な岩場が現われ、ストックをしまって気を引き締めて巨岩=写真=を乗り越えていく。すぐに山頂が見えて、一本杉から登ってきた登山者らが集まっていた。まだ午前10時過ぎ、登山口から2時間ちょっとだ。西側正面に岩手山がど〜んとした姿で立っている。春霞で、くっきりとはいえないが、昨秋よりはよく見える。さすが標高2038mとあって、まだたっぷりと雪をかぶっている。昨秋もそうだったが、姫神山では比較的時間に余裕があるせいか、山の情報交換の話が弾む。1時間あまり休憩、花を狙って地元・岩手県の山を駆け回っている同年輩の登山者からは「姫神山の登山路の中でも北東のコワ坂ルートにはカタクリがよく見られますよ」と聞いた。カタクリの花はまだ早いだろうが、少しくらいは見られるかもしれない。当初は一般的な一本杉コースを下るつもりだったが、予定を変更してコワ坂を選んだ。 ◇ひと気のないコワ坂で雪の感触味わうコワ坂のコースは、城内コースと打って変わって雪に埋もれている=写真。踏み跡があったので、それをたどっていけばと続いたが、結構雪に沈んで靴に雪が入ってくる。念のため持ってきたスパッツを取り出して取り付けた。気温はそう低くないので、雪が固まって滑ることはなかったが、後で4本爪のアイゼンも付けた。雪道は時間を食うが、雪の感触をもう一度味わえるのは嬉しい。下山に使っているのは、私のほかは後続の親子連れだけで、静かな山を独り占めできた。カタクリはつぼみも見つけられなかったが…。 標高700mより下になると、さすがに雪は消えて地道となる。やがてカラマツ林が続き、それが途切れて植林地になって正午過ぎにコワ坂登山口に下りた。林道を西へ歩いて一本杉登山口に。時間はたっぷりあるし、麓まで歩き通そうかと思ってとぼとぼ歩いていたら、後から来た車が停車。若い登山者が「地元の渋民の者ですが、乗られませんか」と声をかけてくれた。 厚意をありがたく受け、国道沿いの石川啄木記念館まで乗せてもらう。西に岩手山、東に姫神山を望む地に生まれ育ち、ここに住み続けて盛岡の市街地に通勤しているという。国道が近づくと、再び正面に岩手山が迫ってくる。「僕はやっぱり渋民から見る岩手山が一番いいと思うんですよ」という若者のことばに異論はない。 (文・写真 小泉 清) ★紅葉・落葉の姫神山 2017.10.13 ★兄・啄木から遠く、近く…渋民に光子想う 2018.10.20 ⇒トップページへ |