古座川を日本固有オオサンショウウオの聖域に 和歌山県古座川町  澤田作哉さん自画像    
 
  全国のオオサンショウウオ大好きが集まる「第38回 日本オオサンショウウオの会古座川大会」=写真上左=が10月28、29日、和歌山県古座川町で開催。当方も2015年と2021年に古座川リバーダイビングでご対面した縁から大会に参加した。

 オオサンショウウは世界最大級の両生類。愛知県から大分県までの西日本に生息し、国の特別天然記念物に指定されているが、河川改修で移動が妨げられたり、産卵する巣穴が減ったりで数が減少している。また食用で持ち込まれたチュウゴクサンショウウオとの交雑が、生息地の京都・賀茂川や三重県名張市の赤目渓谷で進んでいる。250人が参加した大会では、こうした課題で保護団体や大学、高校からの研究や取り組みの発表が続いた。

 ◇移入種でも…隔絶された環境が在来種守る
 
 その中で、古座川に棲むオオサンショウウオは、個体数を推定1000匹まで増やし、日本固有種を保っている。ただ、もともと自生していたのではなく、65年前に兵庫県朝来市から子どもたちに見せようと持ち込んだ7頭が、増水で水槽から川に流出したもの。県や町から自然のオオサンショウウオとして「認知」されていない状態で、今大会で古座川のオオサンショウウオがどう評価されるかを注目していた。

 京都大で両生類研究を進める西川完途教授は29日の講演で、交雑が深刻化する現状を踏まえ、「純粋な日本の固有種を守るうえで、隔絶された環境の古座川は最適のサンクチュアリ。防災対策や不法投棄防止と合せて外来の遺伝子が入らないよう見守っていくいくことが大切」と古座川の意義を強調した。

 これまで天然記念物の取り扱いでは、国内移入について厳格な解釈がされており、古座川のオオサンショウウオについても、以前は「朝来市に戻すべきでは」という意見もあった。講演後に国内移入種の扱いについて西川教授にうかがった。西川さんは「遺伝子から元々いた場所が特定されても、そこに個体群を戻すことには寄生虫の持ち込みなどのリスクもあります。クニマスのように本来生息していた場所で絶滅した固有種が、移入したところで生き延びていたケースもあります」と説明。「古座川のオオサンショウウオはこれだけ定着した以上、国も固有種を守ることを第一義に柔軟な見方をとるのではと思います」と指摘した。

◇大会を人とオオサンショウウオがつながるスタートに

  古座川をはじめ南紀の川の自然を中心に30年以上撮り続けている写真家の内山りゅうさん。「アユ漁やウナギ漁を妨げる得体のしれないものと嫌う人が地元に多かったのが現実。しかし、この大会でこんなに沢山の人が来る生き物だということがわかり、人とオオサンショウウオがつながるスタートになるのでは…。地元に少しでも還元される仕組みづくりも考えられます」と講演で期待を込めた。

 「若いころヨーロッパに動物の撮影に行くと、ジャイアント・サラマンダーは撮ったのかとかいつも聞かれました。ヨーロッパではとっくの昔に絶滅したオオサンショウウオが、島国の日本で見られることは驚異なんですね」という思い出話も印象的だった。

 ◇劇や冊子、先行して学び動く子どもたち

 「古座川がつなぐ山と海」のテーマに沿った研究者3人のリレー講演でしっかり勉強し、地元の高池小5年生の劇「古座川オオサンショウウオ物語」=写真上=には拍手。クイズを取り入れて大切にすることを呼びかける演出も自分たちで考えた力作だ。サブ会場には三尾小児童が実地学習の成果をまとめたポスター展示や冊子も置かれていた。サンショウウオを通して古座川の自然を学ぼうとする積極的な取り組みは、子どもたちが先行しているようだ。

 会場プログラムの最後に和歌山県恒例の餅まき。京都大から来たオオサンショウウオのゆるキャラ・やぽちゃんもまいて、なごやかな雰囲気で会を締めた=写真左。

 現地観察会は、車で一時間古座川を遡って生息地の支流・平井川の河原に下り立った。調査目的で一時捕獲したオオサンショウウオを計測=写真右。体長80cm、体重3450gのメスだそうで、「お邪魔しました」と表敬できた。

 最後まで時間調整にかけまわっていた大会実行委員長の田上智士さん。「大会の中で、古座川に棲むオオサンショウウオの価値が明確に示されたので、県や町もこれまでと違った積極的な取り組みをしていくだろうと期待しています」と手ごたえを語っていた。=2023年10月28、29日取材 (文・写真 小泉 清)
  

 ★古座川の淡水魚、オオサンショウウオ=2015.9.15取材