3年ぶり追儺式 災焼き尽くす鬼再登場 神戸市長田区 澤田作哉さん自画像    
 
   悪役ではなく、神の使いの7匹の鬼が炎で災いを焼き尽くす長田神社(神戸市長田区)の追儺(ついな)式。コロナ禍のため2021、22年と取り止めになり残念な思いをしてきたが、今年の節分には3年ぶりに行なわれると聞き、駆け出し時代に住んでいた門前に急いだ。

 12時半、法螺貝に合わせて、竹を引いた神職二人の先導で囃子方、奉賛会役員、鬼役らが宮入り。本殿での節分祭の後、1時半から太鼓、法螺貝の音が鳴り響いて式が始まった。一番太郎鬼に続き赤鬼、姥鬼、呆助鬼、青鬼と5匹の鬼が壇上に上がり、松明を手に力強く演舞する=写真上。主役の餅割鬼は槌と斧、準主役の尻くじり鬼は槌と鉾を持ち、五鬼と別に壇上に上がり、2匹で息ぴったりと演舞する。

◇「タイパ」の対極も、無駄な所作なし
  動作はゆったりで、繰り返しが多いので今時はやりの「タイパ(タイムパーフォーマンス)とは対極の神事だ。冗長に感じる人もいるだろうし、夕暮れになると寒さが募って来たので「途中で失礼」の人が多い。しかし、足を高く上げてドンと下ろしたり、体をひねって松明を持ち上げる所作は見事で見飽きない。鬼役は氏子から選ばれた成人男性だが、五鬼に太刀を渡す「太刀渡し」=写真下左=は、肝煎の助けを受けて男子小学生が務め、心が和む。

 日が落ちた5時半すぎ、餅割鬼と尻くじり鬼が再び登壇。光の中、掛け合いを重ねる=写真下中。舞台中央に置かれた「十二か月の餅」へ何度も槌を振り上げる餅割鬼=写真下右。6時10分、ようやく餅を割って駆け下り、5時間近い神事を終えた。

◇2年のブランク取り戻す

 終戦後の4年と阪神大震災の年、そしてこの2020、21年を除き途切れなかった追儺式。私が通してみるのは2015年以来だが、見る人も多く、寒さの中にも熱気が感じられた。門前の商店街も、行き帰りに立ち寄る人々で賑わいを見せており、私も気持ちが高まってお土産に名物の長田のういろうを買った。

 追儺式終了後に長田神社宮司の脇延秀さんに伺うと「昨年はぎりぎりの段階で中止の判断をせざるをえませんでした。今回は昨年10月に時間繰り上げなど感染対策をとって行なうと決めていましたが、無事実施できて本当に良かった」と話していた。追儺式奉賛会長の西本隆一さんは、喜びに留まらず「追儺式が行なわれないとなると、気持ちが薄れることは避けられず、2年間のブランクは大きかったです。これからは中止になることはないでしょうから、しっかり取り戻していきます」と将来を見すえていた。 (文・写真 小泉 清)
  

★時をかけ鬼が躍動、長田神社の追儺式=2015.2.2〜3取材

☆気持ち一つに 大震災の翌年には再開=2015.2.11取材
     
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