人が出会う手づくり津波資料館「潮目」 岩手県大船渡市三陸町 ![]() |
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岩手県の大船渡・釜石市境に立つ五葉山(1351m)に登り、山頂から三陸の海岸の風景を見渡した。赤坂峠登山口に戻り、狭い県道をいったん東へ釜石側に下りて大船渡市三陸町越喜来(おきらい)へ。海辺に向かって走ると、田園の中に赤・黄・緑…と鮮やかに塗られた建物が目に入ってきた。隣に住む片山和一良(わいちりょう)さん(73)が自力で設けた津波資料館「潮目」だ。 児童の避難支えた非常階段や仮設店舗移設![]() 大船渡市の中心部で清水康男さんが開いていた理容店が東日本大震災で全壊し、1か月半後に建てた仮設店舗「ニュー清水」=写真。2年半後に本店舗を再建したため、建設業を営んでいた片山さんが手をあげて移築した。がれきの中からいち早く復興に立ち上がった気概と、人と人とのつながりが感じられる建物が今も見られるのは嬉しい。 ![]() 小学校が高台に移転したため、不要となった階段を片山さんが引き取った。「『これは絶対残さないと』と妹から何度も電話され、校舎の解体が始まっていることを聞いてすぐに業者に話し、クレーン会社に来てもらって階段を仮移動した」と瀬戸際の保存だった。復興事業が進むととともに「潮目」は移転を繰り返したが、その都度階段も移設、今は屋根としても活用している ◇ボランティアや旅人、子どもが集う場 ![]() 違う海流どうしがぶつかり混じりあう潮目は、好漁場となる。この「潮目」は、人と人とが集まり出会う陸の潮目になることを願って名付けた。 ◇がれきの中立ち続けた「ど根性ポプラ」 非常階段を上がると、南に越喜来湾が望める。今回は海岸まで行けなかったが、すぐ近くの「ど根性ポプラ」広場=写真=に。高さ25m、半分まで浸かる津波を耐え抜いた木で、がれきの中に一人立つ姿が住民を励ましてきた。木の周辺は商店や旅館が並ぶ町の中心部だったが、浸水区域として住めなくなったため住民は高台に移転。市が買い取った跡地と周辺の民有地を合わせて交流広場として整備した。東側に見える八幡神社の三陸大王杉は根回り13.75m、樹高20mで、樹齢7000年といわれる巨木だ。 ![]() 「勤めを退いてから潮風トレイルをたどって来て、『潮目』に泊まってまた歩いて行く人が結構います。海から山まで越喜来の見どころを回ってもらうのも楽しいですよ」と片山さん。「お嫌い? 好き♡」のイラストが入った手づくりの「越喜来よりみちマップ」をもらったので、次は三陸駅を下りて越喜来をゆっくり歩きたい。 (文・写真 小泉 清) ⇒トップページへ 【参考図書】 「潮目 フシギな震災資料館」文・片山和一良、編・写真・中村紋子 |