船宿寺~高鴨神社 春の花々 奈良県御所市 | ||||||||||
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黄金週間の出だしは天候ままならず山に行きそびれ、4/30も雨が残りそうなので金剛・葛城の大和側(奈良県御所市)の山麓歩きに切り替えた。今年1月末、霧氷の金剛山から下りてきた時の山麓の景色が印象的で、次は春の花の時季にと考えていたこともある。 名古屋空襲生き抜いた椿「大城冠」もまず葛城古道南端近くの花の名刹・船宿寺(せんしゅくじ)から。キリシマツツジ、クルメツツジがはや終盤の輝きを見せ、奥に進むとシャクナゲも楽しめる。溢れる花々の中で目についたのが、「大城冠」(だいじょうかん)という名の遅咲きの椿。数輪ながら八重の蓮華咲きの純白の花を見ることができた=写真左上。家康の命で名古屋城築城を担った加藤清正が植えた門外不出の椿。1945年5月13日の名古屋大空襲で原木は消失したが、焼けた株から芽を出したと記されている。菅原正光住職(94)は戦争末期、旧制五條中学から名古屋市の工場へ学徒動員、この日就業中に猛爆を受けた。「大城冠の苗は、名古屋の園芸家が『椿を育てている寺がある』と訪ねて来られたもので、私の空襲経験はご存じなく、不思議な縁を感じます。『よみがえりの椿』として、皆さんの目に留まる鐘楼横で育てています」と話された。 菅原住職は。御所市の金剛・葛城山麓の住民でつくる「かづらき 煌(きらめき)ネットワーク」の会長も務める。「『コロナでこの3年間来れなかったが、今年は念願の花を見られました』と喜んでおられる拝観者の方が多く、嬉しかったです。ただ、5月3日の花まつりに満開になる花が、今年は4月20日に咲きそろってしまいました。温暖化は本当に重要な問題です」と、5月20日の総会でも、強調していた。 ◇「オオデマリの道」飛び入り花見も楽し 船宿寺の境内だけでなく、周囲の道沿いにもオオデマリの花が続き、「オオデマリの道」と呼ばれている。庭の奥に見事なオオデマリの木=写真=があり、3人でお茶されていたので「ちょっと見せてください」と声をかけると、おかみさんが「どうぞどうぞ」。混ぜてもらってコーヒーもいただき、花見を楽しんだ。おかみさんのほかは、八尾市から来ているご夫婦で、こちらに来て知り合いちょくちょく寄っているとか。 十数年前に「集落をオオテマリでいっぱいに」という話が起き、鉢植えからこんなに大きくなったそうだ。 ◇鴨氏の総社、青紅葉が包む深遠な池 山麓の静かな道を歩いて風の森峠=写真=に。金剛山系から吹き下りる風の通り道で、風神をまつった志那彦神社がある。大和盆地が見渡せる地で、幕末に天誅組の吉村寅太郎が五條の陣屋に向かう途上に陣をしいた歴史を記す石碑が建てられている。 田園の中の道を北に進むと高鴨神社。歴代の宮司さんが集めて育てたニホンサクラソウ50種2000株のうち百数十鉢の展示を見学。古代豪族・鴨氏の社、上賀茂神社、下賀茂神社をはじめとする神社の総社だけに、青紅葉が包む宮池=写真=は深遠さをたたえていた。 (文・写真 小泉 清) ⇒トップページへ |