岩手山の高山植物 岩手県滝沢市、雫石町 | ||||||||||
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盛岡を訪れるたび、堂々とした姿に魅せられてきた岩手山(2038m)。石川啄木や宮沢賢治が仰ぎ、登って書いてきた山だ。山開きを待って馬返し〜網張温泉の横断コースで登頂、活火山の荒々しい姿の中に、北国ならではの高山性植物を楽しめた。 活火山の風景に広がる北国の植生7月5日の朝一で大阪を出て東海道・東北新幹線、いわて銀河鉄道を乗り継ぎ、滝沢駅からタクシーを使って正午前に馬返し登山口着。小雨の中を出発する。4合目から旧道をとって火山礫がごろごろしたガレ場を進む。幸い雨はやんだが見通しは悪く、せっかくの眺望は得られない。6合目付近からは灌木の中、シラネアオイ、ウコンウツギ、エゾツツジなど、これまでに見たことがなかった様々な花が現われる。 ◇利用せぬ手はない8合目避難小屋 夕方4時ごろ8合目避難小屋に到着。もともとここで宿泊を予定していたが、思っていた以上に大きく立派なつくりにびっくり。岩手県山岳会から選ばれた管理人さんもいて安心して泊まれる。 岩手山を知り尽くしたベテランで、ルートや植物についても丁寧に教えていただき、特に遠方からの登山者にとっては大変頼りになる存在だ。地元の登山者は、早朝に馬返し登山口にマイカーで来て山頂を往復、登山口に戻って日帰りする人が大半。この日の避難小屋利用者は私一人だけだった。 ◇御来光前、南東に早池峰山くっきり4時6分が日の出時刻なので、翌朝3時半ごろから御来光待ち。朝焼けの空に浮かび上がる早池峰山の姿が見事だった。ここから南東 キロほどだが、すごく近く感じる。去年の8月に岩手県の山としては初めて登ったからだろうか。天候は昨夜から回復、明けの明星の金星も見られたのだが、雲が厚すぎて上がってくる太陽をかぶさってしまう。「きょうは御来光は拝めないな」と小屋に入ってしまったが、管理人さんの呼ぶ声で出て見ると、雲の上から日の出の太陽が上がっていた。 ◇高山植物と石仏連なる「お鉢めぐり」7時過ぎに小屋を出て、9合目の不動平から北の山頂に向かう。東岩手火山の外輪山の火山砂を歩いていくと、岩手山最高点の薬師岳山頂に立てる=写真。西方向に雪渓がきれいな形で残っている秋田駒ヶ岳など四方の峰々が見渡せる。そのまま火口縁を時計回りに一周する「お鉢巡り」。火口部の中央に火砕丘のタカネスミレの鮮やかな黄色い花が広がっている。白い花のイワテハタザオは岩手山の固有種という。ものすごい強風が舞うというお鉢の厳しい生息環境に耐える植物なんだろう。お鉢巡りでは、頂上より火口部の中央にきれいな紡錘形で立つ火砕丘の妙高岳の方がよく目立ち、道沿いに建てられた石仏も、こちらを向いているような感じだ。「お鉢巡り」の最後に火口部に下りて岩手神社奥宮に参拝した。 ◇火山活動の水蒸気や地熱、温泉の恵みも不動平に戻る。ここから岩稜の鬼ケ城を西へ進むコースもあって迷ったのだが、今回は樹林帯を下る「お花畑コース」を選んだ。お花畑の北側には、火山湖の御釜湖と御苗代湖がひっそりたたずんでいます。お花畑の花はピーク時を過ぎたのか少な目だったが、道沿いにはイワカガミ、サンカヨウ、ハクサンチドリなどの花々が見られた。大地獄谷から登り返して、鬼ケ城からの尾根道に合流。黒倉山、姥倉山、犬倉山の三つの山の山頂をかすめて下る。歩きやすい道で黒倉山の手前では地表から水蒸気が出ていて、「登山道は地温の高い場所を通っています」という雫石町の注意看板が立てられて、火山活動が続いていることが実感できる。 犬倉山からはスキー場のリフト横を回って最後の下り。麓の網張温泉で乳白色の硫黄泉に入って2日分の汗を流した。 関西からでは随分遠く感じるが、8合目小屋を利用して2日かけると安全にのんびり上り下りできる。遠いからこそ充実した山歩きが楽しめる山だ。 (文・写真 小泉 清) ⇒トップページへ |