マンション提供公園に新免遺跡の説明板                                  
  高層マンション建設用地での新免遺跡発掘調査から3年余り、埋め戻された調査地には9階建てマンションが完成し、2017年1月からは入居が始まった。

 周辺住民と事業者とのあっせん協議で、当初の12階134戸の計画は、9階120戸に変更されて両者間で合意書が締結。2015年4月から開発工事、同9月に建築工事が始まり、2016年10月末には完工した。

 大規模マンションには事業者が提供公園を建設、市に引き渡すことが定められており、敷地北側に小規模ながら公園がつくられ完工と共にオープンした。ツツジなど植栽もされて遊具も置かれ、通行人にもちょっと一息つける場になっている。

 このミニ公園の一角に新免遺跡の説明板が設けられた。事業者の開発者負担で、豊中市教委が設置した。2013~14年の調査に焦点をあてながら、1981年から一帯で続けられてきた発掘調査の成果を概観。猪名川流域の低湿地にいた弥生人が200年前の弥生時代中期に少し高台のこの地に移ってからの集落の発展、暮らしの変化をよくまとめている。事業者としても「ここが大昔からの良好な居住地」だったことを示すのはプラスと判断したのだろうが、「開発者負担」の形で協力したことは良かった。

 ◇「豊中空襲を忘れない」今後の課題も

  残念なのは、この説明板では、豊中空襲にまつわる近現代の発掘成果には触れられていないこと。この問題は事業者にとってマイナスイメージだったのかもしれないが、この新免遺跡の価値は「大昔から現代」まで連なっていることにある点からも惜しまれる。

 ただ、敷地も限られ、説明板も何から何まで盛るわけにもいかなかった事情もあるだろう。戦後70年を超えて記憶が遠のいていく豊中空襲については、改めて、発掘の紹介も含めた説明板を、被災を受けた地の近くの公有地などに市や民間団体の協力で設置できれば良いと思う。国民食器などの出土品も、時期を見て展示・紹介してほしい。

 「歴史的遺産に乏しい」と思われがちな豊中市にあって、新免遺跡は貴重。マンションをはじめ周辺の再開発に伴った今回の調査を生かしてもらいたいものだ。
                     =2017.2.20掲載 (文・写真  小泉 清)

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