綿向山の霧氷 滋賀県日野町
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霧氷の華が開く綿向山頂。正面に雨乞岳(左)、鎌ケ岳が立つ |
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・時期 12~3月 ・交通案内 JR近江八幡駅または近江鉄道日野駅から、近江鉄道バスで終点の北畑口下車、日野町営バスに乗り換え西明寺口下車。日・祝日は町営バスは運休で、登山口まで徒歩50分ほど ・電話 日野観光協会(0748・52・6577)、日野町役場(0748・52・1211) =2014年1月5日取材= 鈴鹿山系の中でも最も近江平野に張り出した綿向山(わたむきやま、1110m)。寒気団が近畿を包んだ11日、2009年の初めての登山としてこの山を登ると、7合目から山頂にかけて広がるブナ林に霧氷の花が輝いていた。 新年の樹林飾る華の彼方に白銀の峰々北畑口バス停から北畑の集落を抜けて登山口に到着。麓の小屋で身支度を整えて、愛知川(えちがわ)上流の西明寺川にかかる橋を渡る。山麓には積雪は全くなく、バスの運転手さんも「新年から雪はほとんど降っていない」という。「雪景色のない冬の山では殺風景で来た甲斐がないな」と思ったが、これはいらぬ心配。杉やヒノキの植林の間の九十九折(つづらおり)の正面道を進んで、1時間ほどで林道を横切り3合目に着くころには、雪道になっていた。雪道は朝の冷え込みで固く滑りやすくなっており、ここでアイゼンをつける。40分ほどで赤い屋根の山小屋が建つ5合目で、西側を振り返ると近江平野が一望できる。◇修験の山の伝統留める行者堂 このあたりからシロモジやクロモジ、ウリハダカエデなどの落葉広葉樹の自然林が増えてくる。細い枝の周りに雪や空気中の水分が氷結し、風の影響でノコギリ状になった「霧氷」が現れ始めた。標高930mの七合目の手前からブナ林が姿を見せる。七合目は行者コバと呼ばれ、「中世には北の谷を登って来た修験者が服装などを整える儀式を行った」と説明板にあるように、行者堂が修験の峰・綿向山の伝統を留めている。 ![]() 尾根道を進むと、ブナのほかミズナラやすべすべした木肌のリョウブなどの落葉樹林が続き、枝に霧氷の華が開いてきた。それぞれの木々ならではの霧氷の造形を楽しめる。風上方向の北側の左手に霧氷がよく付いた「エビのしっぽ」も見られ、かなりの強風が吹いたのだろう。好天で空は青く、霧氷の華がよくひきたつ。足を止めて見上げていた「きょう来ていて良かったですね」とあいさつを交わした。 ![]() ◇遠く南アルプスの塩見岳も視界に 七合目から30分ほどで樹林がとぎれてぱっと視界が開け、頂上に出る。5月の日野祭で知られる馬見丘綿向神社の奥社・大嵩(おおだけ)神社の祠と鳥居が雪をかぶって建っている。東側の正面に鈴鹿山系第2の高峰・雨乞岳(1238m)がどっしりとした山容で構えている。すぐ横に奥まってそそり立つ鋭鋒は鎌ケ岳だろう。視線を左に移していけば北側に伊吹山が座っている。 ![]() 頂上を後にして、直下の分岐から雨乞岳へ通じる道を少しのぞいてみた。この道は冬はほとんど人が入らず、新雪を踏んで静かにブナ林の観察が楽しめる。「幸福ブナ」と書かれた案内板が建てられ、「深い雪のため幹が輪のように変形して、くぐると幸せになる」と書かれている。どういう伝承があるのかわからなかったが、一年の幸せを祈ってくぐってみた。綿向生産森林組合によると、綿向山の植林は80年ほど前から。ブナの樹齢は100年くらいと植林前からの自然林で、以前はもっとブナが広がっていたとみられる。今後ブナの成長とともに樹林の深みが増していくことが楽しみだ。 ◇山への思い熱く 里人の助言に感謝 分岐に戻って往路を快適に下る。ほとんどの登山者がマイカーで来るので、登山口からはひとりでバス停まで戻った。麓に戻ってからも、霧氷と眺望の余韻にたっぷり浸れる綿向山。日野町をはじめ里とかかわりの深い山だ。町民を中心に「綿向山を愛する会」という団体があり、標高1110mにちなむ11月10日を「綿向山の日」として毎年登山者を募って登山会を続け、登山道の補修や清掃も続けている。身支度をした麓の小屋でも、会員の男性二人とあいさつをかわしたが、すでに元旦に新年登山をしたとのことで、山頂付近の雪の状況などを教えてもらった。頂上で出会った方を合わせ、地元の人々の綿向山に寄せる気持ちは強く、それだけに、私のように外から登りに来た人間にも温かい。 (文・写真 小泉 清) |
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