*もうひと足*  下山は越前禅定道で市ノ瀬へ                       

白山・越前禅定道のタカネナデシコ  北側の白山一里野から加賀禅定道を上がり頂上に立った白山。帰りは南西へ越前禅定道を下って市ノ瀬に向かうことにした。せっかくなら歴史ある両禅定道をつないで歩きたいという気もあったし、白山市域を中心とした農村の若者が、このルートを使った参詣登山をしていたとも聞いていたからだ。

 8月2日は思わぬ晴天となり、午前4時に白山ひめ神社の神職のうつ太鼓で目覚めた。、ヘッドランプをともして御前峰の頂上に登り、朝日が昇ったのを見て神職に合わせ「万歳」をして、東日本大震災からの復興を祈願した。

 せっかくの好天だからと「お池まわり」もすませて室堂から下山にかかったのは朝8時過ぎ。最も利用者が多い砂防新道と黒ボコ岩で分かれて尾根沿いの越前禅定道を進む。途中までは観光新道と呼ばれ、高山植物も多く見られるので、下山路に使う人が多い。特に「馬のたてがみ」と呼ばれるあたりの岩場まじりの草地には、タカネマツムシソウ、カライトソウなどが咲きそろい、今おなじみのなでしこ(タカネナデシコ=写真左)も目についた。
 尾根道から別当出合に50分ほどで下りる別当坂分岐には午前10時半着。足は快調なので別当出合には下りず、そのまま越前禅定道を進む。ここで標高1600m、ダケカンバなどの樹林も現れてきくる。高山植物も姿を消していくが、ゴゼンンタチバナはしばらくよく目につく。しばらく快適な尾根歩きが続くが、ほどなく尾根が狭まり、急ななはしごを下りる箇所が続く。道はしっかりしていて危険はないのだが、一昨日の雨で滑りやすくなっているところもあり、注意が必要だ。

 このやせ尾根を通過すると、あとはブナやミズナラが続く。分岐から下では登り下りとも出会う人はいず、静かな山行を楽しめる。標高1418mの指尾を越えて下るとヒノキの巨木=写真右=が並んでいてびっくりする。確かに標高1600mほどから山頂部にかけての高山植物は白山の華だが、その下に続く広大な樹林帯があってこその白山だろう。昼も回って「もうそろそろ」と思ったころ、六万山から梯子坂という急な下り道となり、谷の水音を聞きながら下ると、釈迦岳からの道に合流。あとは林道を1キロほど歩いて午後2時過ぎに一ノ瀬に到着した。

 もちろん、本来の越前禅定道はここで終わらない。さらに福井県境を越え、途切れながらも平泉寺まで続いているが、それは今後の課題。午後3時半の最終下山バスまで時間があったので、老舗の永井旅館に寄り、ザックを解いて3日分の汗を温泉で流した。
                         (文・写真 小泉 清)


           霊峰を1日で登り一人前に
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