岩手山のコマクサ、イワブクロ 岩手県八幡平市、滝沢市           

・花期 7月中旬〜8月上旬
・交通 七滝登山口には盛岡駅から岩手県北バス、八幡平温泉郷下車
・電話  八幡平市観光協会(0195・78・3500)
    =2019年7月30、31日取材

強風吹きすさぶ岩手山火口手前に咲くコマクサ
 
 
  以前孫守りに何度か行った盛岡から仰ぎ見ていた秀峰・岩手山(2038m)に7月末、2年ぶりで登った。遅い梅雨明け直前の雨風に悩まされたが、谷沿いの変化のあるコースを通って生きている火山・岩手山ならではの地形や植生を楽しめた。

 生きている火山のもたらす景色と植生 

 今回は北西側の八幡平からの七滝コース。山頂までの距離が長いので人があまり入らないというところに惹かれて選んだ。早朝6時ごろ小雨の中、登山口からミズナラ、オオシラビソの樹間の道を通り、少し東へ脇道を入って45分ほどで七滝。濃い緑の中、落差25mを一気に落ちる姿が爽快だ。

 ここから1時間ほど歩くと樹林帯が途切れ、北側を振り返ると八幡平の茶臼岳が見える。焼切沢を渡るころから硫黄の臭気がしてきて、岩手山が生きている火山であることを実感する。核心部の大地獄に入り、滑りやすいガレ場の斜面を慎重に上がっていく。緊張はするがルートははっきいりしているので、今も火山性ガスを噴出する火山ならではの景観を楽しみながら進めた。

◇「お花畑」の奥にひっそり火山湖

 難所を越えると沢筋に沿って高層湿原の「お花畑」へ。オタカラコウ、ミネウスユキソウなどの亜高山植物が咲いているが、チングルマは花が終わって薄茶の羽毛のような実になっている。ルートを離れて奥に進むと、火口湖の御釜湖、猪苗代湖がひっそり広がり、深いエメラルドグリーンにひきこまれそうだ。ここまでは午前11時までに到着、雨も上がって順調に進んでいるように思えた。
 
  ところが九合目の不動平に上がる長い坂にかかるあたりから、雨がまた降り出して激しくなってきた。当初は山頂を越え北東の「焼け走りコース」からその日に下る予定も考えてましたが、不動平に着くと強風が吹くはガスがかかるわで5m先が見えない状態。これでは山頂越えはリスクがあると判断し、まだ2時前だったが、管理人のいる八合目の山小屋に駆け込みました。

◇強風吹きすさぶ外輪山に北国の群落

 翌朝の穏やかな天気を期待していたが、夜中激しいい風雨が続き、朝さん6時ごろ雨は上がっても強風は止まない。岩手山に精通した管理人に相談すると「火口を取り巻く外輪山のお鉢までは問題ありませんが、お鉢を回って山頂に立ったり、焼け走りコースに越えようとすると暴風をまともに受けることになるでしょう」とのこと。9合目の不動平に戻り、お鉢まで上がって風の様子を見て判断することにした。

 不動平から強風に身をかがめるようにしてガレ場を上がる。こうした環境の中でもイワブクロの群落が広がり、ガスの中に薄紫と白の混じった袋状の花が見えた。日本では北東北、北海道、そしてシベリアに分布する花といい、白山などで見たことがなかった花だ。お鉢の直下で「高山植物の女王」といわれるコマクサの花も見ることができた。「過酷な環境の中でも」というのは人間本位の見方で、コマクサやイワブクロにとっては競争種のいない適地なのだろう。

 お鉢に建った石の祠に着いたところで風は一段と強くなってきた。同行者の意向も聞いて山頂越えの道は取らず、引き返すことに決定。八合目小屋に戻り、樹林帯を通るので強風の影響が少ない馬返しコース新道を選び、昼過ぎに馬返し登山口に下山。予定は大幅に縮小したが、「荒天の岩手山もまた経験」と思い直して岩手山を振り返った。
 
   (文・写真  小泉 清)=2019.7.29、30

 北上川水運の拠点、御蔵につまる盛岡の歩み=2019.8.1取材

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