令和の時代の初登山は５月２日、兵庫・鳥取県境の氷ノ山(1510ｍ）へ。紅葉の秋は３回ほど経験済みだが、春の登頂は初めてで、残雪と花と新緑を一度に楽しめた。

令和の初登り　兵庫の屋根に多彩な魅力

　　定番通り兵庫県側の福定親水公園から登り始める。まず新緑の中を垂れ落ちる落差６０ｍの布滝を仰ぎ見る。「小豆ころがし」と呼ばれる急坂を上がる。ヒョウノノセンカタバミ＝写真＝、つややかな葉のイワカガミ、ショウジョウバカマなど春の花と出逢うので、疲れを感じない。ヒョウノセンカタバミはミヤマカタバミの変種で葉が大きめ。本州の日本海側の山地で見られるが、氷ノ山っで初めて見つかった日本固有種というだけにしっかり見ておいた。�K紫色の魅惑的な小さな草花もあったが、これは後で葉から根まで猛毒成分を含むハシリドコロという植物だそうだ。

　石のお地蔵さんが安置され、単独行の加藤文太郎が一夜を明かした地蔵堂（910ｍ）で一休み。ここを過ぎると若いブナの新緑、山桜の花の向こうに稜線の残雪が光っている。標高１０００ｍの弘法の水あたりから日陰に雪が残っている。　

　但馬と因幡を結ぶ峠・氷ノ山越（1280m）から頂上への尾根道となる。このあたりにブナの原生林が広がっているが、標高1000ｍあたりの先ほどのブナ林と違って、冬枯れのままで若葉が輝くのはまだこれからだ。頂上が近づくにつれて、ところどころ雪道＝写真＝を踏みながら進む。きょうは陽光も降り注いで入山者も多いので、アイゼンなどは付ける場面はなかった。


　◇雪解け進み谷の水量豊かに

　　四方の山々を見渡す山頂は、鳥取県側からの登山者も合流して賑やか。小４、小１、３歳の３姉妹も若桜方面から氷ノ山越を経て長靴で登ってきていた。鳥取側は高いところまで車で入れるので兵庫県側に比べると楽とはいえ、３歳の子も父母におんぶをせがむことなくしっかり登り続けて、ベテラン登山者からほめられていた。

　山頂から雪の斜面を下り、雪解けで水量が増えている谷川を渡る。登りを含め随所に水飲み場があって、渇きを癒してくれる。芦生杉の大木や、芽吹き始めたドウダンツツジツジの群落が広がる東尾根をのんびりと。夕方４時頃まど登山口に下りた。今回もお世話になる民宿「喜楽屋」の主で、氷ノ山の登山やスキーのリーダー西村義雄さん（８４）が迎えに来ていただいていた。これで登山終了、秋とは違った表情の氷ノ山の魅力をたっぷり感じとれた。

　　◇山麓巡って仰ぐ白い稜線も秀麗

　2012年10月に同じコースを回ってから６年半。氷ノ山をとりまく変化を西村さんに尋ねた。養父市営に移ってからも経営難が続いていた山麓の氷ノ山国際スキー場は、地元の会社が経営を引き受けリフトの一部などを更新。そのため地元の集落も地代が確保できるようになり、ツァー業者の宿泊客が民宿に回るようになった。氷ノ山は全国区の山で、「喜楽屋」でも東京や鹿児島からの宿泊客があるという。山屋には加藤文太郎のホームグラウンドとして知られているうえ、「氷ノ山」という山名の響きも魅力的なのだろう。

　ただ、京阪神からの高速道路が延伸して氷ノ山インターができて道路交通が便利になったのはいいものの、近畿圏からの登山者はますます日帰りが増加。３日朝に福定に車で来ていた登山者も、ほとんどがそのまま帰宅。奈良県から未明に３時間半かけていた若者も、夕方帰路についていた。

　比較的時間があり、ピストン運転に不安のあるシニア登山者の私達は民宿で一泊、翌３日は山麓の歴史スポットを周った。国史跡の山城・八木城跡にも40分ほどかけて登り、西方向に残雪の氷ノ山を遠望した。

。　（文・写真　小泉 清）　　　　　

　★氷ノ山の紅葉　　　2012.10.22
　★雪も花も…山の魅力伝え続けて　　2012.10.22

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