ノダフジが織りなす人間模様を記録                                  
 ノダフジのふるさと・大阪市福島区での花の再生にとりくんできた人々の活動を、「のだふじの会」顧問の藤三郎さん(77)=写真右=が「よみがえった福島区の花 のだふじ」=写真左=を自費出版した。

 藤さん自身、ノダフジと春日神社を代々受け継いできた藤家の十八代当主で、家に伝わる古文書をもとに鎌倉時代に始まり、江戸時代には「吉野の桜・野田の藤」と讃えられたノダフジの歴史を解明。「なにわのみやび 野田のふじ」を著わすとともに、「のだふじ史料室」やホームページで伝えた。さらに、ノダフジ復活に取り組んできた人々や団体と2006年に「のだふじの会」を結成した。

 2015年に事務局長を退き、時間に少しゆとりができた。前著を受けて、戦災で全滅したノダフジの再興に取り組んできた人の姿を記録に留めたいという気持ちが強まり、昨年いっきょに書き上げた。

 1971年に大阪福島ライオンズクラブが藤田正躬さんを中心にノダフジの復興運動を展開。中学校への苗の寄贈や各地の明所から里帰りの導入を進めた。それを土台に区内のボランテイアが加わり「ノダフジの会」が発足、人を伝って樹木医の澤田清、塚本こなみさんの指導を受けて、これまで開かなかったフジも咲くようになった。「玉川の藤守さん」広岡忠雄さんは独自の剪定法で藤棚を手入れ、「弟子」に方法を引き継いでいった。

 小中高のフジも、学校の要望と校区の会員の協力で、苦労や失敗を経験しながら進めた。ハトにつぼみを食べられ、管理が難しかった阪神野田駅前のフジは、「藤の翁」田村尚さん(88)の手入れや、福島区役所の支援で防鳥ネットをかぶせた効果で、2014年から咲き出した。最も藤棚が多い下福島公園のフジも、「のだふじの会」が2011年から管理することになり、元オーナーシェフの仲良三さん(66)らの剪定で3年後に開花するようになった。

    ◇「難しい都会のフジ」 誰にも咲かせられる

 こうした活動で蓄積されてきた経験をもとに、「だれでも都会のフジを咲かせられる」技術の手引きと、植物学の基本に立ち返った検証もまとめている。福島区内のフジの名所とともに、交流を続けてきた各地のフジの名所の取り組みも紹介している。全体を通じて人と人のつながりから新しい展開が生まれ、新しい人材の参入が絶えない活動が生き生きと描かれている。

 行政だけに任せず、市民の自主的な活動があって地域が盛り上がっていくのはわかっていても、現実には高齢化やメンバーの固定化で先細りになることが多い。その中で、この「のだふじの会」の記録には教えられることが多い。

 税込で1300円。自費出版のため、書店での取り扱いは阪神野田駅前の林書店(福島区吉野2-28-7)のみ。06-6441-2965、メールbooks.h-t.2316@joy.ocn.ne.jp
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 今年(2017年)の福島区でのフジの満開は4月26日ごろ。「のだふじ巡り」は4月22日(土)を中心に行われ、区内の名所を舞台にいろいろなイベントが企画されている。
       
                  =2017.4.20取材 (文・写真  小泉 清)

ノダフジの甦り ラリーで確かめる=2012.4.22取材

野田・玉川のノダフジ=2012.4.27取材
              
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