残雪の大和葛城山から忍海の里へ                                  
 今冬は寒さにかまけて山はさぼりかりだったので、時間的に行きやすい大和葛城山(959m)へ。河内と大和の国境の山で思わぬ4月の残雪期登山楽しめた。

 大阪・富田林からの金剛バスを千早赤阪村の葛城登山口で下りると、民家の庭の桃の花が咲いていた=写真右。山道に入って大和葛城山西面の天狗谷ぞいの道を遡行する。小滝がかかり鎖場も一か所あって、短いながら、ちょっとした沢歩きを楽しめる。

  ◇雪に埋まった道を踏んで山頂へ

 雪も解けて山も春かな、と思いながら沢を離れて尾根道を進むと、標高700mくらいから日陰に雪が残っている。800mを越して、西行桜で知られる弘川寺から上がる道と合すると、全面雪に埋まった道を進むことになる。山頂に連なる北東側の斜面は雪原が広がっていた=写真左。

 登山口から2時間少し。山頂からは西に河内平野、東に大和盆地を一望できる。大和盆地には大和三山が並び、遠く連なる大峰・大台方面の峰々の稜線は冠雪しているように見えた。

 北へ二上山まで続くダイヤモンドトレイルを進む。リョウブなど落葉広葉樹林が続き、20cmほど雪が積もった尾根歩きを楽しめる=写真右。桜の開花をせかす人が多いけど、3月、4月にも冷え込みが続き、近場で残雪の山を味わえたのは幸いだった。万一の用心に持ってきた軽アイゼンまでは取り出す必要はなかったけど、下り道は滑らないよう慎重に歩いた。

   ◇難航の忍海道下りると大和盆地の景観 

 トレイルは途中で打ちきり、葛城市忍海(おしみ)に下る忍海道をとった。トレイルの賑わいを離れて落葉を踏んで気持ち良く下っていたが、台風の影響か倒木でふさがってきた。利用する人も減っているのか途中で道が途切れ、難航しながら山麓へ着いた。

 ため池が光り、しろい壁の大和棟の民家がところどころにあり、各時代の歴史が積み重なってできた大和盆地の景観。金剛・葛城山系の登山の楽しみは、麓に下りてからの里歩きにもある。

   ◇笛吹神社に日露戦争の露軍大砲

 優雅な名にひかれて笛吹集落に入り、年配の男性に道を尋ねて古墳の麓の笛吹神社=写真右=に参拝した。「ソ連の大砲がある」と教えてもらい「ソ連?」と苔むした石段を上がると、本物の大砲があった。石碑によると、日露戦争戦勝記念として国から奉納されたロシア軍の大砲という。笛吹神社とは違ったイメージだが、葛木坐火雷(かつらぎいますいかづち)神社とも呼ばれていることと関係があるのだろうか。笛吹の集落からも多くの若者が出征したのだろうか。この日はわからなかった。

 菜の花が咲く畑の間をぬって近鉄忍海駅に到着。ハクモクレンの花越に金剛・葛城山系の山並みが横たわっていた。
                     
                      =2017.4.2取材 (文・写真  小泉 清)

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