早地峰山の高山植物  岩手県花巻市  
   
花期 7月〜9月。ハヤチネウスユキソウは7月上旬〜8月上旬

・交通 
夏山シーズンの土・日・休日のみ、岩手県交通が盛岡駅前〜小田越の早地峰登山バスを運行。2016年は6/12〜8/7の間
電話  花巻市大迫総合支所(0798・48・2111)
   ← =2016年8月7日取材

早池峰山五合目付近の岩場に咲くハヤチネウスユキソウ。ミネウスユキソウより白いガクの部分が大きく、表面の毛が長い
 
 

 岩陰に凛然と この峰だけ咲く花々

 岩手県を南北に貫く北上山地の主峰・早池峰山(1919m)。森林帯を抜けて蛇紋岩の巨岩が立つ岩場う岩場を登っていくと、この山域だけに見られるエーデルワイスに似たハヤチネウスユキソウなどの花が次々と現れた

◇標高1250mで森林限界、灌木とお花畑

 盛岡駅前から期間限定の直通バスで花巻市(旧大迫村)の小田越登山口へ。西側の河原坊からのルートが5月の斜面崩壊で閉鎖されているため、小田越から山頂へ至るルートが最も一般的なコースだ。9時10分にスタート、はじめは木道を伝ってダケカンバやオオシラビソの木が茂る樹林帯を上がっていく。30分ほどで標高1250mの一合目、さすが岩手の山だけに、ここが森林限界となって先はハイマツなど灌木だけの世界となる。2合目からは急斜面の岩場となり、照り返しの中の上りとなるが、タカネナデシコ、ハクサンフウロ、チングルマなど高山性の植物がお花畑を形成し、心を和ませてくれる。

 三合目あたりの岩肌には、早池峰山周辺にだけ見られるナンブトウウチソウが淡紅色の花穂をたれている。ハヤチネウスユキソウに注意して登るが、白い花のように見えるガクが小ぶりな一般的な種のミネウスユキソウが多いようだ。

 巨岩が並ぶ五合目を越えると、山頂部の容貌が捉えられるようになってきて、足取りもやや軽くなる。お目当てのハヤチネウスユキソウ、今度はガクの部分が大ぶりで毛も密生しているので、この種に間違いない。7月の開花のピークは過ぎていたが、何とか間に合った。八合目で巨岩を乗り越す2段の鉄梯子をクリア、剣ヶ峰への道を東に見送って北西に向かうと、頂上へなだらかな稜線が続き、お花畑が広がって気持ちも明るくなる。

 午前11時45分に山頂着。早池峰神社の奥宮と避難小屋があり、周囲の山並みが一望できる。山頂からは西へ中岳~鶏頭山へ連なる険しい縦走路、北へは宮古市(旧川井村)に下りる門馬道があるが、今回は時間が限られていて往復で下山することに。ただ、同じルートの復路といえ油断はできない。八合目の鉄梯子、上りはさほどに感じなかったのだが、下りは随分急に、長く感じられた。

 ◇復路の岩場の下り、あわてず慎重に

 そこからは上りで見落とした植物をチェックしながら下ったが、「2合目くらいまで下りてくると油断して、1合目までの急な岩場の下りで、足をとられてけがをする人が多い」とのことで、あわてず急がず着実に下る。復路は2時間で午後2時10分に小田越登山口に戻った。シャトルバスで20分ほど西の早池峰神社本宮に短時間ながら参拝、直通バスで盛岡に戻った。

 上り下り5時間少しの行程だが、東北の山は大学在学当時、残雪の秋田駒ケ岳~乳頭山をたどって以来40年ぶり。1250mくらいから森林限界となってお花畑が広がる北国の山の魅力を一少しながら味わえた。山域は遠野、宮古市にも広がり、三陸沖を航行する漁船にとっても目標となる重要な山なので、何回かルートを変えて歩き、山麓を訪ねる必要がありそうだ。

  ◇環境保全へ携帯トイレで持ち帰り徹底

 それと、驚いたのは環境保全への取り組み。特にトイレの問題は徹底していて、登山口で携帯トイレを販売。山頂の避難小屋横に“”携帯トイレを使うためのトイレ“”を設置して登山者が登山口に持ち帰る方式を徹底している。かつて避難小屋利用者のトイレ処理が大きな問題になったことからの対策という。緑の腕章をつけた「早地峰グリーンボランティアの会」のメンバーが登山口や登山路に多くいて、いろいろアドバイスしてくれる。秀峰を守ろうという地元の人々の意気込みが感じられた。
 
           (文・写真 小泉 清)