★被災者支援広く、長く…熊本学園の学館避難所                                    
 震災の熊本市に4月24日に再び赴き、被災障害者の生活環境を整え、ペットを家族として受け入れるなど先進的な支援活動をしている熊本学園大学14号館の避難所を訪ねた。

 高校時代の級友、花田昌宣・宮北隆志両教授らを中心に水俣学研究センターのメンバーが迅速に起ち上げた熊学の避難所。近くの熊本県立大学、熊本高校が授業再開を理由に早々と避難所を閉めても、理事長、学長の方針で継続。閉鎖した避難所から移ってくる被災者も多く、一時は400人ほどが暮らしてた。中を回らせてもらうと、車椅子で動きやすい空間を確保、他の避難所と比べて障害者や高齢者が生活しやすい環境。他では締め出されている飼い犬も、家族の一員として入っていた=写真下

 ◇飼い犬も家族の一員として支え合い

 すぐそばに、車椅子の高齢の女性と孫3人がいた。孫の一人で爽やかな感じの青年に尋ねると、「犬も受け入れてくれるということを聞いて、熊本学園の避難所を選びました」。名前は「プリン」で13歳のオス。「おばあちゃん」がもう少し若い時からいて、孫の成長を一緒に見てきたのだろう。ケージの中にいても吠えたりせず、おとなしくしている。犬の性格にもよるのだろうが、家族が家を離れて困難な状況にあることを理解しているのかもしれない。また、この避難所のゆったりした空間と、スタッフや避難者の温かいまなざしがプリンにも伝わっているのだろう。運営者によると、避難者からは犬に関しての苦情はないという。

 飼い主の女性は「プリンが一緒にいてくれるので、本当にいやされます」。足が不自由でも、3人の孫が交代で車椅子を押して散歩に連れて行ってくれるそうだ。若者が小さかった時は、おばあちゃんが公園などに連れて行ってたのでだろう。

  犬といえば、22日に同大学近くの路上で遇った犬を連れた女性が「犬は人間以上に地震に敏感で、余震があるとすごくおびえるんです」と話していた。散歩でよく出会っていた犬が倒れたブロック塀の下敷きになって死んだそうで、「お友達が亡くなって悲しかったね」と愛犬に語りかけていた。震災を生き抜いてきた犬は、家族にとってますます大きな支えとなっているのだろう。

 ◇学生ボランティアに加え被災者も手伝い

 熊学の避難所では、登録した400人の学生ボランティアが1日20~30人ずつ活動している。その一人の商学部4年の男子学生は「アパート倒壊のおそれがあり、ここに避難してきたが、若い者が動かないとと活動を始めました」。主に炊き出しに当たってきたが、今後は車椅子の補助など仕事を広げていきたいとのこと。地元テレビ局を第一志望に就職活動中だったそうだ。

 4月下旬からは、学生に限らず年配の人も含め被災者自身に配食の手伝いなどをしてもらっている。あらかじめ割り当てているのでなく、その都度部屋を回って協力してくれる人を募るなど自主性に基づいている。

 ◇外部団体も経験や組織力生かし炊き出

 外部団体も様々な形での支援を寄せている。24日の昼前に着いたときは仏教系のNPO「れんげ国際ボランティア会」が鶏汁の炊き出し中。同会のスタッフのレシピに沿って同大学や県内の他大学のボランティアが調理や配食をしていた=写真右。鶏汁には熊本産の筍がどっさり=写真左。数が余ったので御相伴させてもらったが、ダシに合って味はなかなか。この日は昼まで雨が降り続いて小寒かったので鶏汁は最適だった。

 同会の久家誠司さんによると「阪神、東北の経験を生かし、野菜たっぷり、旬のものを取り入れ被災した方に喜んでいただくメニューを工夫してます」とのこと。会の母体は熊本市の北隣の玉名市にある大きな寺院で、熊本地震では信徒からもすぐ募金が寄せられたという。継続性、組織力、集金力などの面で、災害時の宗教系団体の活動能力は大きい。

 ◇長期的な支援継続へ募金口座も開設

 支援活動は長期戦を迎えており、宮北教授(社会福祉学部長)は現時点の課題として「安心して自宅に戻っていただく、あるいは一時的に公営住宅やみなし仮設住宅への入居に関する支援」などをあげている。連休明けの5月9日に授業再開が予定されているが、避難所には障害者や高齢者は長く留まることも想定される。学園理事長らは「授業再開に伴い避難所を閉めることはありえない」と明言しており、学館避難所を存続するためにも校舎等の修復などを検討。熊本学園では「熊本地震復興支援募金」口座を4月28日に正式に開設した。

  また花田教授らは熊本県全域での障害者を支援する「被災地障害者センターくまもと」を発足させ、4月26日に募金口座を開設。共に長期的な活動を広く支えるための受け皿を整えている。熊学に根差しながら熊学を超えた支援活動の広がりが期待されている。 
  *熊本学園大避難所や被災地障害者センターくまもとの動きや募金口座については、花田昌宣、宮北隆志両氏のフェイスブックを参照してください。最も新しく、具体的な情報が発信されています。

         =2015年4月24日取材 (文・写真  小泉 清)

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