比良・武奈ヶ岳の霧氷  大津市          

   
                
  
 
    
武奈ケ岳山頂から霧氷の向こうに琵琶湖を見下ろす

  時期  1月~3月
・交通案内   京都バスの出町柳~朽木学校前の路線は12/16~3/15の間は運休。坊村へのバス便はJR堅田駅から細川行バス便だけとなり、到着が遅めとなる。タクシー利用なら堅田駅前~坊村で7000円前後。                    
                 =2016年3月12日取材=
        
 3月12日は湖国に春を呼ぶ「びわ湖開き」の日。でも、当方はまだ積雪期の山に未練があって、琵琶湖西岸を走る比良山系最高峰の武奈ケ岳(1214m)へ向かった。この日の朝は久しぶりの冷え込みで、御殿山を経由する尾根道では思わぬ霧氷を見ることができた。

   積雪期の終盤飾る白銀の華

  以前は京都・出町柳から大原を通って比良山系西側を走るバスがオールシーズン毎日走っていたが、今は土日祝に限られ、12月から3月下旬までは全く運休。表側の堅田からのバスでは遅い時間になるため、今回は同行者とでタクシーを利用、朝8時半に登り口の坊村に着いた。坊村は花折断層が作り出した朽木谷に沿った集落で、明王谷を渡ると葛川明王院。比叡山中を歩く荒行・千日回峰を始めた相応が平安時代に修行の場として開いた古刹だが、ここにも雪が全く残っていない。御殿山へのコースをとり、土の急坂をうんざりした気持ちで登り始めた。

    ◇冷え込みと吹き付けで一挙に

 ところが、標高600mを越えたあたりから前日降ったらしい雪がうっすら積もり、尾根を上がるにつれ雪道になり、待望の「白の世界」が広がってきた。標高800mほどまで来るとブナやリョウブなど広葉樹の枝先が白銀に光っている。はじめ、雪がついているのかと思ったが、近づいて見るとギザギザで、雪や空気中の水分が氷結した霧氷に間違いない。今朝の氷点下の冷え込みと風の吹き付けで白銀の華が咲いたのだろう。大津市で零度だからこのあたりでは氷点下5度くらいまで下がったかもしれない。霧氷の枝の向こうに御殿山から武奈ケ岳に至る西南稜が左前方に見えてくる。

 御殿山で一服してから武奈ヶ岳と進む。少し下り道が続いて滑りやすいので、ここで初めて用意していたアイゼンをつける。このあたりからドウダンツツジなどの低木がっ主体となるが、斜面全体に霧氷の樹林が広がり、青空に映える。頂上からは琵琶湖一円が見渡せ、竹生島や沖島もくっきり浮かび上がっている。滋賀県で最も高い伊吹山(1377m)はもちろん、美濃・近江の国境の金糞岳(1317m)など琵琶湖を取り巻く山々も望める。

 2005年の正月に雪に埋もれた武奈ケ岳を登ったことはあるが、その時も霧氷は見られなかった。当初、2月に予定していたが同行者の勤務の都合で再登が3月中旬にずれこんだのだが、今朝は条件がそろったようで、「きょう登ってラッキーでしたね」と山頂で出会った人々と喜び合った。

  ◇琵琶湖めざして真っすぐに下る

 ほとんどの人はマイカー登山のため往路を引き返すが、比良山系横断をめざすわれわれは東へ琵琶湖の表側をめざす。小さな流れに沿って下ると、スキー客の減少のため2010年シーズンで閉鎖された比良山スキー場跡出る。ここを横切ると八雲ケ原湿原。雪は消えていたが、夏にはノギランやツボスミレなどさまざまな花が咲き乱れる貴重な湿原も、今は彩に乏しい。湖面を見下ろしながら北比良峠から琵琶湖側の尾根を下りる。少し下ったところにアセビの木が続き、雪を少しかぶりながらも常緑の葉のわきで赤い小さなつぼみを見せていた。

 あとは南東へ北比良峠に出て、琵琶湖を見下ろしながらダケ道を真っすぐ下山。山麓の「比良トピア」で温泉に浸って、私にとっての積雪シーズンを締めくくった。
               (文・写真  小泉 清)

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