青垣・東芦田のセッコク  兵庫県丹波市      


・花期
5月中旬〜6月初旬
「里山セッコクまつり」は原則、5月第4日曜開催


・交通 
車で舞鶴若狭道・春日IC〜北近畿豊岡道、氷上ICを下りて北へ10分=丹波市青垣町東芦田1226−1
JR福知山線柏原駅か石生駅から神姫バスで東芦田口下車、徒歩20分

電話  あおがき観光案内所(0795・87・2222)
   ← =2015年5月24日取材

初夏の青葉の中でセッコクの純白の花が輝く
 
 
 緑の田園を青い山々が垣のように囲む丹波市青垣町東芦田の里。むらおこしの拠点施設「ごりんかん」から獅子尾山(519m)へ至る山道を上がると大岩の岩壁に、野生蘭のひとつ、セッコクの真っ白の花々が凛としたたたずまいで開いていた。

   古里の山の岩壁に純白の姿再び

 丹波でも奥あいにある東芦田は、里の人々自らが工夫したむらおこしが活発に行われてきた。毎年2月上旬に開かれている「節分草まつり」に今春3年ぶりに訪ねた際、「5月にはセッコクまつりがありますよ」と聞いていたことから丹波に向かった。

 「ごりんかん」の前には、東芦田の人達が育てたセッコクの鉢植えが展示、販売されている。これも気になったが、先に自然の岩場で生えているセッコクを見たかったので、すぐ裏手の山に登った。尾根道づたいに大岩の岩稜をつたって山道を上がる。ところとどころの岩場は特に注意して見るが、セッコクの花は見当たらない。この山には信長の命を受けた明智光秀が丹波攻めに侵入した際に、土着の芦田氏が対抗したという古い山城があったそうで「城が丸」と書かれた道標が続いている。そこまで上がればと思ったが、頂は意外と遠いので今回は引き返した。

 途中、山仕事の人の休憩テントまで下ると、やはり岩場のセッコクを捜しに上がってきた二人連れの男性に出会う。念のため近辺の岩場をもう一度確かめて一緒に下山したが、その際「大岩の下の方にはセッコクが生えていますよ」と教えてもらった。

 その通り、大岩の下に回ると、南面の岩壁をかけ上がるようにして30〜40株ほどのセッコクが真っ白な花を開いていた。先程は大岩の上部を通過するようにして通ったので気づかなかったようだ。岩塊のごく一部にしか過ぎないが、それでもに自然の岩場の上にたたずむセッコクの姿を見ると、気持ちも引き締まる。

 
◇絶滅の危機乗り越え、むらおこしの活動に

 「ごりんかん」への近道を下って、「セッコクまつり」をリードしている東芦田自治会長の芦田浅巳さん(69)に話をうかがった。周辺の山々はセッコク、ヤマフヨウ(山芙蓉)などの山野草が豊かで、芦田さんが子供のころはどこでも見つけられたという。しかし、日本が豊かになって「山野草ブーム」になると丹波のセッコクは目をつけられて「山荒らし」が入り込んで、ほとんど絶滅の状態になったそうだ。

 東芦田では有志40人が都市と農村を交流する施設として1991年に「ごりんかん」を建てて活動を続けてきたが、その中の若手メンバーを中心に「セッコクを山に取り戻そう」という声が15年前ごろから高まってきた。裏山はすでに入手が難しくなっていたので、高さ18mの名瀑・独鈷(どくこ)の滝近くまで足を伸ばし、ザイルで群生地の岩場に降り立って元株を採ったそうだ。

 メンバーが庭に持ち帰って育てて3年がかりで花を確実に咲かせるようにし、一部を裏山の大岩で復元した。それが定着して公開できるようになったことから10年前から「セッコクまつり」を始めた。

  
◇育てる楽しみ広がり、リピーターも続

 今ではほとんどの家がセッコクを育てている。特に熱を入れている人は地元産の岩や古木、竹炭に植え付けた東芦田ならではの作品を出展、大阪・神戸方面からの愛好家と「セッコク談義」を交わしていた。土田正敏さん(72)ら3人が育てた株は500〜1000円ほどで販売。土田さんはいろいろ栽培法を試みたが、ミズゴケの上で自然に育てる方法がベストと気づいた。本職は大工だが、帰宅後は3時間ほどセッコクの世話に没頭、600株ほどのセッコクを用意した。

 「昨年の祭で持ち帰ったセッコクが冬を越して今年も花をつけたことが嬉しくて、また来ました」という川西市の夫婦連れもおり、土田さんは「丹波のセッコクは強い。ここのセッコクが広がって、何度も来てもらえるとうれしいですね」と話し、育て方をアドバイスしていた。

 自治会長の芦田さんは大学を出てから京都市で会社勤めをしていたが、長男として家を継ごうと家族とともに帰郷。農作業ができなくなった高齢者の田畑も引き受けてコメや小麦などをつくるとともに、「若手」としてむらおこしに取り組んできた。「大岩だけでなく、城が丸へ向かう山道に沿いにいい岩場があるので、今後里のセッコクを戻して自生地を回復させていきたい」と意欲を燃やしている。

 セッコクの真っ白な花が、歴史を秘めた丹波の初夏の山に広がっていくのが楽しみだ。

          (文・写真 小泉 清)