すっきりと伊吹山頂に着けるようにしたい 笹又コース                                   
 残念なことに、今回下山路に使った魅力的な笹又コースは、公式には伊吹山ドライブウェイによって断ち切られ、登路に使った場合、静馬ケ原から伊吹山ドライブウェイを歩かないと山頂に立てない。

 登り口の「さざれ石公園」には、「ここから伊吹山ドライブウェイを通り伊吹山頂への登山はできません」という無粋な看板が、同道を運営している日本自動車道路株式会社の手で建てられている。「伊吹山ドライブウェイは自動車専用道です。道路内を歩くことは道路交通法により禁止されています」とまで書いてある。私はこうした事情を知らず、山頂手前の駐車場から静馬ケ原まで道路を歩き、同じ看板があって驚いたのだが、登り口にまで置いてあるとは思わなかった。

  地元の人の話では看板は近年建てられ、草刈りで静馬ケ原まで上がった際にも、ドライブウェイに立ち入ると巡回員から注意されることになる。法律論に限ると、会社の主張通りなのだろうが、もともと山頂まで通じ里の人が守り、登山者も使っていた山道を断ち切った道路なのに、事業者が最近になって人を締め出すかのような掲示をするのはひっかかる。現在の事業者は2006年に近鉄グループから譲渡を受けた豪投資銀行傘下の会社だが、こうした経緯を承知しているのだろうか。

  ◇山道の延伸か、歩行帯の設置ができないの?


 「静馬ケ原から頂上まで、気兼ねなしに歩いて行ける道がつけられないのか」という声は古屋でも聞いたので、少し経緯を調べてみた。伊吹山ドライブウェイによると、「自動車専用道である以上、歩行者が立ち入って事故に遭ったりしてはならないので明確にした」と数年前に看板を立て、巡視員がドライブウェーを歩いている人を見つけると声をかけているという。揖斐川町役場では、「笹又道や北尾根道は、自動車専用道のドライブウェイを通らないと山頂に出られないという実態がある以上、岐阜県側からの伊吹山への登山道として積極的にPRはできない。伊吹山そのものより山麓の薬草を使った施設が観光PRの中心になる」とのことだった。

 今年4月の伊吹山再生協議会で笹又道の整備も論題になり、構成員の同町としても「ドライブウェイができるまで山頂へつながる道があったのか、当時の経緯を調査する」などしていたが、結局わからず、「ドライブウェイを通らず、笹又道を山頂に伸ばすことは地形や道路の位置や構造などから今のところ難しい」となったそうだ。次善の策として、笹又道や北尾根道の最上部の静馬ケ原から終点までのドライブウェイ区間は歩行帯を設けて登山者らの歩行を認める方法も考えられ、再生協議会でも提起されたそうだが、事業者にとって難点も多く、具体化は進んでいない。

  ◇県境や市町の枠超えて伊吹山の魅力増し、発信を

 「岐阜県からの登山路は滋賀県側のルートに比べると、登山者は圧倒的に少ないので、ことさらに取り上げるメリットもない」という認識もあるようだが、一方で「事実上、滋賀県側の登山路1本に集中した結果、お花畑の踏み荒らしなどが起きている。植生保護のためにも、ルートの分散が必要だ」という意見もある。先のことを考えるなら、経費の負担など難しい問題はあっても、岐阜県側のルートを堂々と山頂まで歩けるようにし、その魅力を地元自治体が山麓の施設と結んでPRできるようにすることが望ましいと思う。入山料まで取るのなら、行政は県や市の境界を越えて伊吹山の魅力を増し、山麓の人々にも還元する施策が必要だ。ドライブウェイ側も、伊吹山の自然あっての事業なのだから、法律論だけでない地元との協力を考えてもらいたい。                                                                        (2014.8.4取材、文・写真 小泉 清)

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