*もうひと足* 滝かける蕎原の谷道登り 信仰の道下る                

 和泉葛城山の別の表情と、紅葉の進み具合を見たかったので、1週間後の11月3日、貝塚市の蕎原(そぶら)から谷筋をたどるルートをとった。

 南海貝塚駅から水間鉄道で終点の水間観音駅下車、さらに水鉄バスで終点の蕎原(そぶら)に下りる。集落を後に川沿いに進む。春日橋で左手の本谷林道をとり、さらに宿ノ谷林道に入る。道はしばらく舗装されてはいるが、春日橋から車止めをしていて一般車の通行ができなくなっているので歩きやすい。谷は次々と滝をかけるようになり、二段、三段の滝、落差十数mの滝もあって変化がある=写真右。今の時期も良いが、夏のシーズンなら最上のコースだろう。

 標高500mあたりにブナ林の再生地があり、ここでも高さ4mほどに育った幼木が黄葉していた。の谷と離れて左手の道をとる。このあたり植林地が途切れてコナラ、リョウブなどの落葉広葉樹が優先してくる。ツツジ類の潅木もあるので春も華やかだろう。

 標高700mを超えたところからは頂上にかけて紅葉が染めている=写真左。そしてこの道沿いにでもブナの大木が姿を見せて来た。すでに黄葉は盛りをすぎて朱色をおびてきているようだが、これはこれでみごたえがある。その中でも目だって大きなブナの木があった。直径で1・3m、幹周りで4.3mはあるようだ。裏側に回って見ると一部が空洞になっており、相当の古木で弱ってもいるようだ。しかし、幹から若い枝が伸びており、生命力はまだまだ盛んな様子だ。ほどなく塔原から上がる尾根道に合流し、再び葛城神社の石段を上がって頂上に立った。

 下りは岸和田市塔原(とのはら)への道をとった。前回は案内板のある612mの地点から山仕事の道に入ってそのまま蕎原に下りたため、今回は昔、和泉葛城山への登拝道として使われたという道を通して見たかったからだ。ただ登拝道の面影はあまり残っていない。玉冷泉という案内板があり右手に入ったが、水はほとんどなかった。ブナをはじめ広葉樹林の衰退で森の保水力が減ってきたのだろうか。標高500mまで下った枇杷平(びわだいら)は村人が雨乞いをした場といわれ、石灯籠が残っていたが、いつからか上部はなくなってしまっていた。

 ほどなく蕎原への道が左手に別れ、北へ直進すると、頂上から1時間半少しで塔原の里に着く。登り口に「右かうや」と書かれた古い石の道案内板があり、今たどってきた道が和泉葛城山を越えて紀州に入り、紀ノ川を渡って高野山に向かう道だったことに思いを巡らした。

 登り口の蕎原も下り口の塔原も葛城神社の氏子として祭礼を行う山麓の五ケ荘の集落。紀州側も含めて和泉葛城山にはまだまだ魅力の裾野が広がっているようだ。               (文・写真 小泉 清)
  

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